■エストロゲン子・子宮筋腫に悩まされて④[ブルゾン]
MRIや血液検査(腫瘍マーカー)の結果を聞く日。
診察室がいくつも並ぶ長い廊下の長椅子で名前を呼ばれるのを待っていると、一番奥の真っ暗な分娩室に電気をつけて個室をつくるK先生を見つけました。
診察室がいくつも並んでいるのに
別に新しく個室をつくるのは…なぜ?
K先生が忙しそうに準備する様子を見ているだけで
「あの部屋に呼ばれるのは私だよね。とうとう宣告をうけるのか…」
とため息が出ました。
診察を待つ女性全員がスマホを片手に画面を眺めているのを見て
余裕だな…とキラキラ眩しく羨ましく感じました。
私はスマホを見る余裕もないくらい落ち着きませんでした。
精神統一しよう!
背筋を伸ばして座禅です。
実はこの2週間ほど、がんに関する本を3冊ほど読んでいました。
がんと聞くと驚いてしまいますが、
約2人に1人はがんになり、
3人に1人ががんで亡くなっています。
誰だって身近に起こることで、がんになる要素があるのです。
正直、これまで「がん」と聞くとこの世の終りのように思っていましたが、
治療により治っている方や手術をして再発していない方も多くいらっしゃることが解りました。
また最近がんサバイバーという言葉をよく聞きますが、
米国ではがん体験者本人だけではなく、その家族や友人、介護者も含めた広い概念で定義されています。
だから、かなり多くの方ががんサバイバーに該当しているのです。
「がんは身近!」
本を読んで、そんな心構えと覚悟ができているはずでしたが…不安は不安ですよね。
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精神統一を20分ほどしていると、名前が呼ばれました。
招かれたのはK先生が準備していた個室でした。
「ここまで大きいと変性(悪性)も疑わないといけなくて…造影剤でMRI検査させていただきましたが、MRIと血液検査の結果ですが…
(〝ファイナルアンサー〟の、みのもんたさんの様に間をとりすぎる…)
悪いものは見つかりませんでした。
良性の腫瘍ですね!
腫瘍マーカーの血液検査の数値もとても良好です。
筋腫に押されている内臓が心配でしたが
それもOKで、貧血もありません!」と…。
優しい顔のK先生の顔がいちだんと穏やかなお釈迦様の様でした。
しかし、前にMRIをした写真と今回のMRIを見比べながら、
次に発した言葉は…。
「もともとあった子宮筋腫はこれ!13㎝!(と、MRIの写真を指しながら)
それから、別にあった小さい筋腫が(7年前のMRIの写真を指しながら)
この7年でだいぶん成長したみたいで‥‥‥‥
35㎝ほどあります…」と。
え!
え!
え!?
何?
13㎝の筋腫の他に
ささささ…さんじゅうごせんち…
なんと!13㎝の筋腫とは別にあった筋腫が
35㎝の巨大子宮筋腫に成長していたのです。
MRIの写真には、
13㎝のコロンとしたボールのような筋腫と、
大きな風船のように膨れ上がった35㎝の筋腫がお腹を占拠していました。
こんなものがずーっとお腹の中に入っているとは。
しかもこの状態でフルマラソンや100㎞マラソンを走っていましたから、
よく走れていたものだと思いました。
かかりつけ医の検診では13㎝の筋腫の経過観察はしてたけれど、
もう1つは巨大すぎて見落とされていた様です。
こんなことってあるのですね。→ちなみにエコーもしていましたが…見落としちゃうのね…。
35㎝と聞いてびっくりしすぎて
まるで漫画のように
口に手を当て声を出しながら息をのみました。
K先生が驚かれていたのは、筋腫の巨大さが1番だったのですが
「この状態で貧血があまり無いこと…
オシッコが出ないとか頻尿とか…
便秘がないのがスゴイ…
ふつうはおへそのあたりまで筋腫が来たら、
痛くて病院に来るものだけど…」と。
そうなんですよね。
確かに山を走っていて下りの時に痛いなぁ…と思ったことはありました。
栄養面で貧血対策はしっかりしていましたし、お腹が大きい黄体期はランニングできない事もあり、ちょうどいい加減でウォーキングを継続していたのが良かったのだと思いました。
日頃から適度に体を動かしていてお通じや排尿もスムーズでしたし、それほど健康面に関しては後ろめたいことはありませんでした。
改めて思うのは、ウォーキングには本当に助けられたと実感しています。
筋腫が大きくなり、周りの血管や臓器を圧迫していて血液やリンパの流れが悪くなっていても、ウォーキングすることで心身ともにスッキリさせてくれました。
ウォーキングをしなかったら、もっと体の不調があったかもしれません。
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検診結果を聞く覚悟と準備はできていたけれど、
悪性では無かった安心感と、
35㎝と聞いて急に怖くなって
不安で思わず涙がポロポロ流れました。
K先生がティッシュを差し出しながら
「大丈夫!大丈夫!
安心してください!治しますから!」
と言ってくださり
嬉しくて余計泣けてきました。
お医者様の「大丈夫!」という言葉は、なんて最強な言葉なのでしょう。
閉経したら子宮筋腫は小さくなる…は非常に危ういです。
閉経待ちをしているうちにどんどん成長していきましたし、
結果大手術をすることになりました。
どんな時も長年連れ添った子宮と卵管、子宮筋腫は全摘になります。
開腹手術は通常はおへその下からなのですが、私の場合はみぞおちの下からで、大きな傷になります。
でもでも、K先生の言葉を信じ前に進みます。
外の待合室で不安そうに待っていた夫に
みのもんたさんの様にもったいなぶりながら、良性だったことや筋腫や子宮・卵管を全摘する結果になったことを伝えました。
夫は涙をポロポロ流して
「良かったー最良な結果やんかー」
と喜んでくれました。
涙を流しながらも
「35㎝って聞いてブルゾンちえみかと思った」と
withTの真似をしながら振り返って
「35㎝!」言って喜んでいました。(複雑…)
子宮筋腫を取ってから細胞診をするので、その結果次第で何とも言えませんが、私はこの数日ほど「がん」と向き合う日が続き、他人ごとではないと考えるようになりました。
だから「がんじゃなかったー良かったー」なんて言葉は心では思っても、軽々と口にできなくなりました。
夫は〝がん〟についての勉強を始めました。
私も〝がん〟をはじめ更年期症状や子宮筋腫をはじめ女性特有の病気のことをさらに勉強し、周りの女性に伝えていきたいと思っています。
今回の大きな出来事は、これから生きる使命感をもたらすものとなりました。
ああ、おかげさまです。
ありがとうございます。
この体と命(時間)を無駄にしません。
大切に使わさせていただきます。
病院からの帰り道は、二人でお祝いです。
(→関連記事:バランスとちょうどいい加減)
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