■おこんじょうるり
おこんじょうるり。
生物科学者の福岡伸一さんは
「皮膚も内臓も筋肉も骨も…人間の細胞は日々生まれ変わっているのだから、変わらない自分の存在は無くて、実は日々新しい〝わたし〟である」と言っていた。
脳の細胞も新しくなっているのであれば、昔のことを覚えている脳はすごく不思議で面白いと思う。
図書館で見つけた絵本〝おこんじょうるり〟
35、6年前かな…。中学生の頃の細胞はどこにも残っていないはずなのに、表紙を見ただけで中学時の記憶がよみがえるのはスゴイな…と思う。
文化祭で行う劇〝おこんじょうるり〟で役を決めるのに、全登場人物のセリフを読んでみようということになったのだが、キツネが唄う浄瑠璃が一体どういうものなのかわからない。今であればネットで検索したらすぐにわかるんだろうけど。
当時のレコード屋さんで浄瑠璃のカセットテープを買って研究して真似て、セリフを読む日に準備したら…
「本格的すぎる」とキツネの役に即決してしまった。
極力セリフも出番も少ない役を狙っていたから、浄瑠璃の謎に興味を持った自分を悔やむ。
そして、キツネ役に決まった日から文化祭までの間、キツネの浄瑠璃の練習と、毎晩本番でセリフが全部ぶっ飛ぶ夢を見ていた記憶がある。
中学時代の細胞はどこにも残っていないのに、〝おこんじょうるり〟の絵本を見るだけで、切なく悲しい劇のストーリーと、誰も期待してないのににこたえようとしていた緊張感を身体に感じるのが不思議だ。
で、先日〝中学校の同窓会〟…という連絡があったのだが、みんなあの頃の細胞はどこにも残っていないんだろうな。