■【コラム】フルマラソンを走る⑤「夏のトレーニングから秋のトレーニングへ切り替えてみよう」
今年のレースももうすぐ始まりますので
フルマラソンを走るために大切なことを
「走る運動指導者」の視点から何回か分けて連載していきます。
暑かった2015年の夏。
しっかり走り込んだと思います。
夏に充分練習ができた方は秋以降のマラソンシーズン、
自己ベスト更新に期待が持てる事でしょう。
どんどん過ごしやすい気候になってきている今、
夏の練習から秋シーズンへの練習に切り替えることもオススメです。
夏の練習はスピードより量(距離)重視のことが多いですが、
走りやすい秋は練習に変化をつけ
スピードを高める練習にチャレンジしてみましょう。
■どんな練習がオススメなの?
スピード練習というと、
高強度と低強度を繰り返しながら行うインターバルトレーニングや
いつもより速いペースで長く走るペース走を想像するかもしれません。
このように夏の練習から急激に強度を上げる様なトレーニングをすると怪我や故障の原因になります。
ここで紹介するのはタイムトライアルです。
少しスピードを上げて、息切れをするようなペース(ATポイント以上)で短距離を走ります。どれくらい時間がかかるのか見ておきましょう。
1000mからスタートするのもいいし、2000mや3000mでもよいでしょう。
■ATポイントって何じゃ?
筋肉がドーンと重くなる、息切れするペースをATポイントと言い、
有酸素運動から無酸素運動への移行ポイントとなります。(無酸素性作業閾値ともいう)
息切れするペース(ATポイント以上)で走ればパワーも使い、
呼吸は浅く早くハハーゼイゼイとなり、
疲労物質である乳酸も溜まりやすくなるのですが、
この息切れするペース(ATポイント以上)は、長く走れないけど、
速筋繊維(大きなパワーとスピードを発揮する筋肉)を鍛えることが出来るのです。
ちなみに息切れしないペース(ATポイント以下)で走れば、
息も乱れず楽に長く走れ、
遅筋繊維(小さいパワーで長く運動できる筋肉)が鍛えられます。
※遅筋繊維は速筋繊維より、筋肉が落ちにくい性質を持っています。
夏の練習で持久力に優れた遅筋繊維を造ったら、この秋、速筋繊維を造っていきましょう。
このATポイントは、全身持久力の指標になり、
ATレベルが高いほど全身持久力が高くなります。
トレーニングによってATのレベルを上げていくことが可能なので、是非チャレンジしてみませんか!
■ATポイントの見つけかた
ATポイントを見つけるには、
徐々に負荷を上げるトレーニングをして、
呼気ガス測定や血液中の乳酸量を測定するのですが
(写真は、ドイツでATポイントの測定をしたときのもの。自転車をフル回転で漕いでもうあかんっていうまで運動します。メッチャしんどかったです。で、当時すごーくATポイント低くてショック受けました。)
そんな設備を誰もが持っているわけはないですね。
手軽にできるのは、
どんどんペースをUPしていって、息切れしたときの走る速度をチェックをしておくのです。
たとえば、1㎞あたり5分50秒の速度で走っている時に息切れをした方は、
その速度で走ったときがおおよそのATポイントとなります。
この5分50秒でタイムトライアルするのです。
まずは1000m×3本を息が戻る位リカバリーをとりながら・・・
慣れてきたらリカバリーを短めにしたり、
2000m、3000mと距離を増やし筋肉に刺激を与えておきましょう。
楽になってきたら、また息切れするポイントを探し徐々に漸進しながらタイムトライアルします。
■レース前は
10日前には練習量も減らし、疲労をとっていきましょう。
■【コラム】フルマラソンを走る①「フルマラソンを走るためのエネルギー」
■【コラム】フルマラソンを走る②「30kmの壁を超えるグリコーゲンローディング」
■【コラム】フルマラソンを走る③「レース前・中・後の水分補給」
■【コラム】フルマラソンを走る④「トレーニングと休養のバランス」